--  社会サービス科学  -- 

 

 飛沫感染と湿度との関係及び、 除菌施策に対する公共水道消毒指針の再考の必要性

(2020/07/08)

社会サービス科学コンサルタント 株式会社環境システムプランニング 代表 漆原

 

1.新たなスパコンのシミュレーション結果

6月17日、理化学研究所はスパコン富岳を使用 しウイルスの飛沫拡散のシミュレーターを公表し た。報道では大きく取り上げていなかったが特に 注視すべき点は飛沫の流れと湿度との関係にてウ イルスは湿度が高いと空間に漂う時間が短くなり テーブル・床に落ちやすくなるとの結果であっ た。この事実から「高湿度の環境下ではテーブ ル、床等の除菌により留意が必要」との見解も出 たが逆にもう一つの大きな課題が解決されたよう に思われた。それは従来から「ウイルスは高温多 湿になると弱まる」とされてきたが、多くの専門 家は「この新型ウイルスは現に南半球の高温高湿 度の環境下でも猛威を振るっており従来の常識で は説明できない」言っている。しかし、今回のシ ミュレーションからは「ウイルスは湿度が高いと 空中浮遊時間が短くなる為にリスクが高い空気感 染としての環境は低減する」ゆえ、従来の一般論 は適応すると推論ができる。又、学問的には*1 飛沫感染と空気感染は分けられているが本日の報 道では世界の学者239人が空気感染の恐れがあ るし、もはや現実的には区別する必要性は無いと も考える。 

 

*1「空気感染」の病原体は5μm以下を指し単独 でも空気中を浮遊する為に感染力が強いとされ る。一方、「飛沫感染」は飛沫に含んだ病原体が 粘膜に入り感染すると言われる。しかし、水分が 蒸発すれば飛沫核と呼ばれ浮遊するゆえ空間では 大きな差異は無いと考える。 

 

すなわち、先の米国ニューヨーク市民の感染の最 大要因は朝の地下鉄ラッシュアワー時の非三蜜が 原因と発表されたがマスクをしない市民同士の飛 沫が顔等に直接、飛んだ訳であるがこの状況下で は湿度条件は関係ないと考える。しかし、例えば 特に冬場のレストラン等では室内は乾燥しており本シミュレーションからはウイルスの空間浮遊率 は高まり、マスクをしない無防備状態ならば感染 率は高まったものと推定できる。よって、南半球 も同様であり一番の感染要因は湿度に関係無い非 三蜜条件と考えるが次は特に冷房室内での低湿度 による感染力も高いと考えられる。

 

2.夏場を迎えた国内における重要な除菌施策

以上ゆえ、日本はこれから猛暑を迎えクーラーの 使用も高まり特に窓の無い店舗等では加湿は重要 施策となるが加湿を付加した合理的な*2除菌シ ステムとして、安全な除菌剤を用いた超音波ミス ト噴霧方法がある。しかし、この点に関しては現 在、除菌剤の使用について情報が混乱しており特 に空間への噴霧方式は単一的、ネガティブな見解 が多い。その要因には「一般薬剤と同様に効力と 安全性は相反する事」を前提に議論がなされず又、 まだワクチンも出来ていない未知のウイルスへの 効力の検証よりも人間への非安全性の検証の方が 容易な点にある。しかしながら、今日のこの大脅 威に立ち向かうには現状の我が国水道指針と同様 にある程度のリスクも考慮した施策も必要である と考える。 

 

<公共水道消毒指針>

日々の安全な水道水を確保する為に消毒目的に *3 次亜塩素ナトリウム等(遊離残留塩素0.1 mg/l以上)を注入している。しかしながら、既 に40年前からトリハロメタン(発がん性物質) 等の生成他多くの安全性が指摘されつつも注入は 継続されている。理由は何か?それは薬剤の注入 リスクよりも消毒をしない場合のリスク(大腸菌 等の細菌の混入による健康被害)の方が大局にお いて大きいと判断しているからである。 

 

*3 次亜塩素酸ナトリウム

食品添加物としても認められている薬剤でもある が今日の本分野における情報混乱の要因の一つが成 分名称が類似している為に某メーカーの漂白剤=次 亜塩素酸ナトリウムと解釈・報道されている。しかし、 この漂白剤は次亜塩素酸ナトリウム+水酸化ナトリ ウム+界面活性剤等の混合剤であり100%次亜塩 素酸ナトリウムとは物性も全く異なりさらには高濃 度仕様で有る事も明確にした上で論じて欲しい。

 

*4除菌システム

①個人でする事 ②家庭でする事 ③外部でする事 (公共施設・機関、学校、職場、ホテル・飲食店等) があり、さらには個々、特有な除菌重点箇所がある。 又、除菌作業は専用員がするか?経済性も考慮せね ばならず除菌剤の使用・方法は一律ではない。具体的 に言えば、子供がいる家庭の洗面所、テーブル等は安 全性を重視した除菌剤。ビル・飲食店等のトイレ等は 経済性も考慮した強力な除菌剤の使用となり除菌 剤・作業は体系的システムに捉える事が必要である。

 

3.室内における2点の空間噴霧目的・方法

以上の大局的な観点とは言え「ある程度のリスク の許容範囲」として室内への噴霧の使用目的・方 法は2点ある。

 

① 人がいない(無人)場合

一般除菌剤の使用と同様であり安全性へのリスク は無いが酸性領域剤の使用はパソコン等金属類へ の影響を留意する必要がある。

<メリット>

室内全体に噴霧する事で壁、ソファーの裏側等、 除菌作業が困難な個所にも行きわたる事が可能で ある。特に室内で留意せねばならない床面やクー ラーのフィルター部への定期的な除菌効力がある。

<使用方法> 空間ボリュームによるが学校、オフィス等の就業 後最低でも3時間程度は必要となる。

 

② 人がいる(有人)場合

無人よりもさらに安全性を考慮せねばならず次の 安全な除菌薬剤の選択をせねばならい。 a. やはり、他成分を混合しない「食品添加物」1 00%の認定品であり且つ低濃度である事。 b. 伴い、一定の安全実証試験を実施している事

 

<メリット>

a. 先述のスパコン実証試験からも加湿する事で ウイルスの空間浮遊率が減じ、床面等に落下す る事で除菌効力が増す。 b.残存する空間浮遊ウイルスに対しては安全な低 濃度薬剤であり瞬時に、完全に、不活性化する 事は困難であるが一定の効果は生じる。

 

<使用方法>

実際の使用は「国の三蜜指針」に基づき、窓の換 気にも努めなければならないが、どうしても換気 ができない店舗等では室内環境にもよるが2~ 3時間スパンの運転がベターと考える。 

 

結論として現在、特にクラスターが懸念する 店舗等においては水道消毒指針と同様に一般 的なリスクの懸念よりも目先の大脅威に戦う 方を優先し、もう少し高濃度且つ、連続運転の より効果が高い空間噴霧施策も検討すべきで あると考える。

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

社会サービス科学とは

社会の営みをリアルに捉えなければ本来の社会サ ービス(広義)の提供は困難であり、捉える為に は社会活動上の重要な言葉である「真実と事実の 違い」「問題と課題の違い」等の分析から始まる 又、行動には絶対的に正しいと判断する事は困難 であり結果、優先順位論、比較論で決定をせざる を得ないとする実践論理を追求する学問。