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--  安全情報  --

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ヒューファク安全情報:経済と安全の両立 ③  2021-02-02

ヒューファク安全情報:経済と安全の両立 ➁  2021-01-29

ヒューファク安全情報:インドネシア航空機が墜落    2021-01-12

 

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2021/02/05

 

 

外村孝史氏から:

 

HuFac Solutions, Inc.

 

  経済と安全の両立

 2021-02-02

 

Q: COVID-19 問題について、「経済と安全の両立」に関連する事態が生じたのですか?

 

A: 今般の通常国会において、政府与党が COVID-19 対策の特措法に罰則(Penalty)を加 える改正案を提出しました。野党の意見で微修正して成立させるようです。「経済と 安全の両立」の障害となる要因の1つは、人間の規律違反や怠慢といった「好ましく ない行動(Unfavorable Behavior)」のようです。罰則はこのような行動を防ぐ手段 の1つですが、法制化には ヒューマンファクターの知識を活用したトップダウン思考による慎重な対 応が必要です。与野党の政治家をはじめ法制化に関わった人達には、必ずしも十分な 資質が備わっているとは思えません。そのために、安易な妥協による「刑事罰を除い て行政罰を残す」といった合理性に欠ける法律になってしまったようです。これでは 現場に新たな混乱をまねくことになり、本当の「経済と安全の両立」を実現できない のではないかと危惧しています。

 

.1 与野党による改正案修正協議

 

Q: 特措法改正案の骨子はどういうものですか?

 

A: 概ね、入院に応じない感染者、患者の入院を拒否する医療機関、営業規制に応 じない飲食店などに刑事罰あるいは行政罰を科すというというものです。

 

Q: 改正案の出所はどこですか?

 

A: 報道によれば、保健所を所管する厚労省、地方自治体の首長からなる全国知事会、 政府諮問委員会(分科会)とのことです。いずれも現場の混乱に当惑してやむを得 ず罰則を望んでいるようです。分科会では、反対派8名、慎重派2名、賛成派4名と 意見が分かれましたが、座長の賛成の意見で決議されたそうです。

 

Q: 野党はどう対応したのですか?

 

A: 基本的には罰則を設けることに反対しませんが、懲役などの刑事罰は重すぎると反対 しました。行政罰では罰金の軽減を主張しました。

 

Q: 法制化に関わった人達の判断をどう思いますか?

 

A: 率直にいって、 ボトムアップ思考の域を出ていないと思います。特に、分科会の判断は ボ トムアップ思考そのものだと思います。 トップダウン思考で考えれば、民主主義が多数決で結 論を出せるのは通常時のみです。緊急時にはリスクマネージメントで対応するというのが本来の民主主義です。 リスクマネージメントは、「誰(WHO)が正しいか?」ではなく「何(WHAT) が正しいか?」という基準で判断するのが原則です。たとえ少数意見であっても、緊 急事態の回避に適切な判断であれば採用されるべきです。国際的な航空界が推奨する CRMCrew Resource Management)訓練では、「たとえ上司や会社の指示、 マニュアルの規 定に反していても、正しい判断であれば堂々と主張すべき」と現場の パイロットや整備士、 航空管制官、 ディスパッチャー、客室乗務員に教えることになっています。ヒューマンファクターの専 門用語ではこれを「Advocacy」といいます。分科会の メンバーに ヒューマンファクターの知識が少 しでもあれば、多数決で決めることも、座長の意見に安易に従うこともなかったはず です。

 

Q: トップダウン思考で ヒューマンファクターの知識を活用して罰則を法制化するには、どうすればよい のでしょうか?

 

A: その ヒントは民間航空の シカゴ条約付属書(ICAO Annex.1)に書かれています。Annex.1 は、 パイロットや整備士、航空管制官、 ディスパッチャー、客室乗務員といった民間航空界の要員に 付与する資格要件(Personnel Licensing)に関する規定です。当然、規定に違反し た場合の罰則についても規定されています。

 

.2 ICAO Annex.1

 

Q: 「規定に違反した場合の罰則」はどのように規定されているのですか?

 

A: 細々とは規定されていません。Annex.1 の冒頭に「 ヒューマンファクターの原則に則ること」と 規定されているだけです。この規定は罰則についても適用されます。ヒューマンファクターにつ いては、Annex.118 のすべてで規定されています。つまりは、「ヒューマンファクターの原則 を理解できなければ航空輸送業に従事する資格はない」ということになります。

 

Q: 「 ヒューマンファクターの原則」というのは、具体的にどういうことですか?

 

A: 他の ICAO の ヒューマンファクターに関する書類(Documents)で詳しく説明されています。です が、 ボトムアップ思考のわが国の航空関係者には理解しにくいようです。弊社は講演や コン サルティングでわかりやすい解説しています。ここでは罰則に関するものをわかりやすく説明します。人間の「好ましくない行為」は、意識レベルが低いものから順に「過失 (Error)」と「怠業(Sabotage)」、「犯罪(Criminal Action)」に分類されます。「と るべき対応」は「行為」ごとに異なります。改正案に関わった人達は、このような分 類があることに トップダウン思考で気づくことができなかったようです。

 

好ましくない行為 意識 レベル とるべき対応

過失(Error) 潜在意識 教育、啓蒙

怠業(Sabotage) 前意識 説得、指導、行政罰

犯罪(Criminal Action) 顕在意識 刑事罰

 

.3 人間の「好ましくない行為」

 

Q: ①入院に応じない感染者、患者の入院を拒否する医療機関、営業規制に応じない 飲食店などの行為は、どの「好ましくない行為」に分類されるのですか?

 

A: 弊社は現場の状況をすべて知るわけではありませんが、ほとんどが「怠業」ではない かと思います。中には「過失」があるかも知れません。感染患者が自暴自棄になって 故意に感染を広めようとすることがあっても、先ずは説得と指導に努めるべきです。 それでも効果がなければ、「犯罪」と判断して刑事罰を科すことも致し方ありません。

 

Q: 刑法 211 条の「業務上過失致死傷罪」は図.3 の内容から乖離しているようですね?

 

A: そうです。わが国の刑法 211 条は、法治国家といわれる先進国では特異な法律とみら れています。資格をもつ職業人に広く適用されます。わが国が シカゴ条約の批准を審議 した際に、刑法 211 条との関連で批准に反対する司法や行政の関係者がいました。結 局は、批准せざるを得ないことになりました。条約が国内法に優先することから、航 空事故や インシデントには刑法 211 条が適用されないことになっています。

 

Q: JAL の御巣鷹山事故では 520 名が死んでいながら起訴はおろか誰も逮捕されなかった ようですが、そのためなのですか?

 

A: まさにその通りです。これまでのわが国の航空機事故でも、誰も起訴されていないと 思います。ANA の雫石事故では2名の自衛隊 パイロットが起訴されて刑事罰を科されまし たが、「 シカゴ条約は自衛隊に適用されない」と判断されたようです。

 

Q: 御社代表は JAL の御巣鷹山事故に関わっていたのですか?

 

A: 当時、JAL の技術部で操縦 システム(Flight Control System)を担当していました。当初、 相模湾で方向舵 (Rudder)の残骸が発見されましたが、「自身に責任があるかも知れ ない」との戦慄を覚えました。技術部の他の部門が担当する後部圧力隔壁(Aft Pressure Bulkhead)が原因とわかって安堵したことを憶えています。その後、前橋 地検に呼び出されて事情聴取されました。直接の担当ではないことに疑問を感じまし たが、検事のお話を聞いて納得しました。弊社代表の経歴を調べた検事は、「貴方の ような人がいながら、なぜ事故を防止できなかったのか?」と弊社代表を詰問しました。その時、「担当ではないから責任を逃れられる」と安易に考えた自身の視野の狭 さが恥ずかしくなりました。御巣鷹山事故の本当の原因は、ボーイングによる修理 ミスで はありません。JAL の技術陣が トップダウン思考で判断できなかったことが本当の原因で す。それ以来、弊社代表は検事に自身の責任を諭されたと考えて、JAL 退職後に会社 を設立してトップダウン思考を社会に広めようと決意しました。検事による指摘が弊社代 表の意識をボトムアップ思考から トップダウン思考に変える切掛けになったようです。御巣鷹 山事故の真因については、開示すべきかどうか熟慮しています。

 

Q: 「刑事罰を除いて行政罰を残す」という国会の決議には、どのような不備があるので すか?

 

A:.3 に記されている、「過失」や「怠業」に対する「とるべき対応」が欠けています。 行政罰を科すだけでは問題は解決しません。適切な教育や啓蒙、説得、指導が不可欠 です。その分野でも ヒューマンファクターの知識が必要になります。

 

Q: JAL の乱気流への対応では、どのようにパイロットに乱気流の勉強を促したのですか?

 

A: キャンペーンを開始した後で、ある パイロットが弊社代表を訪れました。乱気流事故を防ぐため に常に雲を観察しながら飛行しているとのことです。夜間には白黒のアナログ式気象 レー ダーの画面で雲の形を観ているそうです。「積乱雲や ウィンドシアをかなりの確率で回避す る自信がある」、「乗客の中に年老いた自分の母親がいると思って飛んでいる」とも 話されていました。この話を社内安全誌で社内に紹介しました。社員の乱気流に対す る対応が徐々に変わっていったことはいうまでもありません。

 

Q: 「高齢者が感染すれば死に至る」ことを知りながら「自身は重篤になる可能性は低い」 と自由に振舞う若者がいるようですが、どのように説得すればよいでしょうか?

 

A: 真実を隠さず知らせればよいのです。COVID-19 の感染は、感染学の見地からも「空気 感染する エイズ(AIDS)」といえます。感染した後に養生で陽性から陰性に転じても、 完全に元に戻れる保証はありません。エイズと同じように、一生爆弾をかかえて過ごす ことにもなりかねません。その影響は、余命が短い高齢者よりも若者の方が大きいと いえます。感染 ルートについても、 エイズと類似しているとも考えられます。わが国の当 局やマスコミがなぜこのことを声高に伝えないのか、理由がわかりません。真実を率直に 伝えて納得させれば、若者の行動は大きく変わると思います。行政罰や刑事罰はその 後で考えればよいことです。読者の中には司法界の権威といわれる方が少なくありま せん。これまでの記述の中に訂正があれば、ご指摘いただくようお願いします。

 

本情報に関する連絡先: ㈱ ヒューファクソリューションズ

URL: http://www.hufac.co.jp

 

E-mail: info@hufac.co.jp

 

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2021/01/30

 

外村孝史氏から:

 

HuFac Solutions, Inc.

 

経済と安全の両立➁

2021-01-29

 

Q: 先日の「経済と安全の両立」について、読者の方から コメントが届いたそうですね?

 

A: そうです。読者の方々はそれぞれお忙しいにもかかわらず、早速 コメントを寄せてくださ いました。どれも示唆に富むものばかりです。その中のいくつかをそのままご紹介し て回答させていただきます。コメントには公表して差し支える内容は含まれていないと思 われますので、あえて個別に了解をとることを省かせていただきました。

 

Q: 1通目の コメントはどういうものですか?

 

A: これは高名な政治家の方からのコメントです。さすがに政治家としての多角的な観点から のご意見をいただきました。読者の中には、有力な政治家や有能な政治家秘書、政治 担当のジャーナリストの方々が多数いらっしゃいます。幅広い視野で考えておられる方々の ご意見を歓迎します。

 

 

様々な活動を展開されている事に敬意を表します。 今回も少し感想を述べて見たいと思います。 まずは些細な事ですが、「例外に漏れず」は「例に漏れず」の誤りだと思います。 また、 ノーベル賞受賞者には江崎玲於奈さんをはじめ何人もお会いしていますが、 ボトムア ップ的な発想をしているなと思うような人はまずいませんでしたので念のため。

 

次に本題ですが、本当に難しいですね。ただ乱気流への対応とは次元が違うような気 がします。 GOTO キャンペーンは間違いだったと思います。結果的に税金で支援して富裕層を楽しませ ただけのことになってしまいました。 ホテル等にとっては、期間中は超繁忙でお客さん を断らざるを得ない状況、中止になると超閑散で従業員の扱いに困る状況という事で 平均すれば何もしなかった方が稼働率は高かったのではないかと推測されます。旅行 代理店とか ソフトウェアの会社はある程度 メリットがあったと思いますが。 コロナと経済の両立ということは言うは安くして実現は極めて難しいですね。僕は現在 の状況からして コロナの撲滅に全力で取り組んで行くことが、今、すべきことであると 考えています。途中で緩んでしまって行ったり来たりになってしまうことが一番心配 です。経済の方は人間が生活していく以上、その時代、時代にあった形のものが必ず 出来てきます。もう既に、巣ごもり需要とか IT 活用とか言う形で新しい生活様式が生まれつつあります。どのような状況下でも社会活動は必ず行われていきます。今の 延長線上になるかどうか、或いはそのスケールがどの様になるかはわかりませんが、コロナ 収束後も人間が生存して行くとすれば、その時々の地球の状況に合わせて新しい形の 社会生活、経済が存在している筈です。 ある程度の段階でコロナが収束すると言う保証が無い以上、経済のことを余り重視する ことには反対です。地球温暖化に伴ってこれまで経験したこともないような疫病が発 生してくるだろうと言われています。今回はそれに向けての試金石となるかもしれま せん。乱気流についての知識経験を活かした提案を期待しています。

 

Q: 「例外に漏れず」は「例に漏れず」の誤りではないか」とのご指摘はどうですか?

A: JAL の安全推進部門に関する表現ですが、「例に漏れず」と書くと「安全推進部門は どこもボトムアップ思考で行動している」ととられかねないとの忖度から、直感的に「例 外に漏れず」と書いてしまいました。考えてみればご指摘の通りで、日本語としては 適切でありません。「無理に忖度すれば人間はエラーをしてしまう」という実例と考え てください。あるいは、この方は「安全推進部門はどこもボトムアップ思考で考えている」 とあえて言わせたいのかも知れません。これはいささか考え過ぎでしょうか?このエラ ーを含め第1報の修正版を添付しますので、できれば差し替えてください。

 

Q: 「ノーベル賞受賞者には(中略)ボトムアップ的な発想をしているなと思うような人はまずい なかった」とのご意見はどうですか?

 

A: 「ノーベル賞受賞者のような優秀な人でも例題をすぐには解けない」という意味を強調し すぎて、極端な表現をしていました。ボトムアップ思考だけではノーベル賞を受賞できない というのも事実だと思います。ですが、弊社代表がこれまでに接した欧米先進国のリス クマネージメントの専門家には、 ノーベル賞受賞者と同等かそれ以上の頭脳をもつ人達が数多く いました。残念ながら、 ノーベル賞には リスクマネージメントの部門はありません。ご承知のよう に、ノーベルは鉱山開発などの経済振興のために ダイナマイトを発明しました。皮肉にも、ダ イナマイトは武器などに利用されて人類の安全を脅かす存在になってしまいました。ノーベル はこのことを悔やんでノーベル賞の創設を遺言したといわれています。ノーベルは リスクマネージ メントの部門を真っ先に創って欲しかったはずです。原子力についても、 ダイナマイトと同じ ことがいえます。福島第一原発の事故は原子力が「経済と安全の両立」をできていな いことを露呈してしまいました。地熱発電などの代替 エネルギーについても、人類は トップ ダウン思考で「経済と安全の両立」を慎重に模索しなければなりません。

 

Q: 「(COVID-19 対策は)乱気流への対応とは次元が違うような気がする」とのご意見は どうですか?

 

A: 他の読者の方からも、同じご意見を電話で聞いています。多くの人がそう思っておら れるでしょう。ですが、この方がコメントの最後で「乱気流についての知識経験を活かし た提案を期待しています」と エールを贈ってくださっている中に正解があると思います。 第1報では紙面の都合で詳しく書けませんでしたが、JAL における乱気流への対応は さまざまな点で COVID-19 対策の参考になると思います。最も強調すべき点は、どち らも オーケルトラでいう指揮者が必要という点です。指揮者は各 パートの楽器を奏でることが できなくても、 トップダウン思考で音楽を理解していなければなりません。「経済と安全 の両立」という問題の解決では、 トップダウン思考ができる リスクマネージメントの専門家が指揮 者に相当します。わが国における COVID-19 対策の現状はさしずめ「指揮者のいない オーケストラ」といえそうです。JAL における乱気流への対応の詳細を知っていただければ、 COVID-19 と酷似していることをご理解いただけると思います。

 

Q: COVID-19 対策の現状が「指揮者のいないオーケストラ」といえるということを具体的に指摘 していただけませんか?

 

A: 弊社は、感染者が出た クルーズ船が横浜港に寄港しようとした昨年の初めに「トップダウン 思考の対策は、感染が疑われる人を検査して隔離すること」という見解を発信しまし た。ですが、当時の感染病の専門家は搭乗者全員を船内に留めて事態を悪化させてし まいました。感染病の専門家といわれる人達が トップダウン思考の対策を知らなかったか らです。その後も、 マスコミに登場する識者たちは「PCR 検査や抗体検査を増やすことが 重要」と強調し続けました。これに対して、厚労省の医系技官は管轄の保健所の業務 が停滞することを恐れて、検査を増やそうとしませんでした。オーケストラの各楽器の奏者 がそれぞれ勝手に演奏していることに似ています。

 

Q: オーケストラの指揮者に当たる リスクマネージメントの専門家がいれば、どのように指揮するのでしょ うか?

 

A: トップダウン思考で「検査はあくまでも隔離のため」と教えるとともに、「隔離すること の本当の意味」を教えます。

 

Q: 「隔離することの本当の意味」とはどういうことですか?

 

A: わが国の社会は「感染者を病室などに閉じ込めて非感染者との接触を絶つ」と考えて いるようです。それよりも、「非感染者に明確な警告(Warning, Alert)を与えて、非感染者を危険な区域に近寄らせない」ということが重要です。それを具体的に実践 するには高度なヒューマンファクターの知識が必要で、感染病の専門家や厚労省の行政官に望む には無理があります。JAL における乱気流への対応でも、 パイロットや客室乗務員、 ディス パッチャー、整備技術者といった専門職の方々にその点を強調して納得してもらいました。

 

Q: 乱気流への対応で「危険区域に近寄らせない警告」というのは何ですか?

 

A: パイロットに積乱雲の存在を知らせる機上気象 レーダー(Onboard Weather Radar)と、搭乗 者に乱気流への突入を知らせるシートベルトサインです。これらの警告が受け手に理解されて 信頼されることを目指して、ヒューマンファクターの知識を活用した粘り強い活動を続けました。

 

Q: 機上気象 レーダーではどんな問題があったのですか?

 

A: ヒューマンファクターの知識がない技術者が従来の アナログ式の気象 レーダーに換えてデジタル式の気象 レーダーを安易に採用していました。デジタル式は雲の密度や厚さからコンピュータで計算して、 積乱雲をレーダー画面に赤色の格子(Mesh)の集まりで表示します。当時は コンピュータの識 別能力に限界があったことから、積乱雲は過剰な範囲で赤色に表示されて、「狼少年 効果」によりパイロットの信頼を失っていました。「人間は デジタル情報よりも アナログ情報 の方が処理しやすい」というのがヒューマンファクターの原則です。「従来の アナログ式の方が使 いやすかった」という パイロットの意見は ヒューマンファクターの観点からは妥当なものです。高価 な デジタル式の気象 レーダーを アナログ式に戻すことはもはや不可能でした。パイロットにはこの 現実を知らせて納得してもらいました。

 

Q: シートベルトサインではどのような活動をしたのですか?

 

A: シートベルトサインを乗客に信頼してもらうには、社内教育だけでは限界がありました。JAL で初めて「乗客教育(Passenger Education)」という概念を導入して、社員の協力 を求めました。当初、乱気流による危険性を公表することについて反対する社員も少 なくありませんでした。 Q: COVID-19 対策と密接な関連があるということですか? A: 最近になって、COVID-19 の実態が徐々にわかってきました。中国の武漢市を対象とす る国連調査団の調査によっても感染 ルートが科学的に明らかにされると思います。次ぎ に関心を呼ぶことになるのが、非感染者への「感染 ルートの明確な表示」ということに なります。COVID-19 に関する科学的に正しい教育も必要になるでしょう。さまざまな 点で、JAL における乱気流への対応の経験が参考になると思われます。

 

Q: わが国の COVID-19 対策に対する当面の提言がありますか?

 

A: 政府や諮問委員会の専門家の皆さんは一所懸命に COVID-19 対策に取り組んでおられ ると思います。ですが、 ヒューマンファクターの知識がありトップダウン思考で考えられるリスクマネージ メントの専門家が参画していないことが気になります。わが国にこのような人材がいな いとは限りません。老若男女を問わず探すべきと思います。現在、世界は有効なワクチン の開発を期待していますが、残念ながら成功の保証はありません。当面の間「経済と 安全の両立」を模索しなければならないとすれば、思い切った意識変革が必要になり ます。弊社は微力ながら協力できればと思っています。

 

Q: 「経済の方は人間が生活していく以上、その時代、時代にあった形のものが必ず出来 てきる」というご意見はどうですか?

 

A: 大いに賛同できます。人間(の脳)には本来、素晴らしい復元力が備わっています。 潜在意識の中の生存本能によるものです。ですが、「化学反応は触媒があれば促進さ れる」というのも事実です。 トップダウン思考の対策は「人間の復元力を支援する触媒」 と考えていただければよいと思います。

 

Q: 「地球温暖化に伴ってこれまで経験したこともないような疫病が発生してくるだろう」 というご意見はどうですか?

 

A: 科学者の間でそのような見解があることは承知しています。ですが、弊社はトップダイン 思考で「COVID-19 の蔓延は デジタル社会における電磁波の拡散と無縁ではない」と考え ています。その理由は、穀物や野菜の種苗の遺伝子の組み換えが電磁波で行なわれて いるとの情報があるからです。もちろん、このような見解を他で聞いたことはありま せん。COVID-19 はこれまでの ウィルスとはまったく異なる DNARNA)をもっているとい われています。電磁波が新しい ウィルスを発生させることは十分にあり得ることです。

 

Q: 2通目の コメントはどういうものですか?

 

A: これは農学博士号をもって国連の世界保健機関(WHO)の専門家として国際的に活躍さ れている方からの コメントです。

 

 

興味深く読ませていただきました。 巨視的な視点と、説得方法の大切さを思いました。 日本の コロナ対応を比較する対象として、東 アジアと欧米ばかりが論じられますが、昨年 2-10 月私が滞在していた インドは、地味ながら着実に成果を挙げています。公共交通を 止めた ロックダウンの徹底、無料 PCR の普及が鍵だと思います。インドの高等文官(India Administration Services)は日本の上級公務員に比べて、 トッ プダウン思考が応用されているように思います。 植民地政策の良き遺産だと思っています。

 

 Q: 「インドの高等文官は日本の上級公務員に比べて、 トップダウン思考が応用されているよう に思える」とのご意見はどうですか?

 

A: インドが世界第2位の感染者を出している現実を聞けば、納得できない人が多いかも知 れません。ですが、弊社は納得できます。米国の マイクロソフト社の「Windows」と アップル社 の「Mac」がコンピュータ市場を席巻しているのは、トップダウン思考の プログラム設計を採用し たからです。具体的には、概要(Outline)から詳細(Detail)へと上位階層から下 位階層に向けて窓(Window)を順次開いていくプログラム設計です。あまり知られてい ませんが、この手法を最初に考え出したのは両社で働いていた インド人の科学技術者で す。インド人はかつて「 ゼロ(Zero)の概念」を発見したという優秀な頭脳の持ち主で す。ゼロックスも インド人による発明です。シリコンバレーの IT 産業でも多くの インド人科学技術 者が活躍しています。インド人が COVID-19 対策の活路を開く可能性は十分に期待でき ます。

 

Q: 3通目の コメントはどういうものですか?

 

A: これは産業界で システム安全の コンサルタントとして活躍されている方からのコメントです。

 

 

ありがとうございます。 今回の例題の回答はすぐに分かりました。少し トップダウン思考が身についてきたのか も・・・まだまだですが。 経済と安全の両立を考えると、ボトムアップ思考では「OR の Min-Max 戦略」を思い浮かべ てしまいますが、トップダウン思考で考えれば両方とも両立させる方法もあるということですね。 各国の COVID-19 への取り組み方は、確かにボトムアップ思考です。ロックダウンしてでも経済 を活性化させる、この方策を考えるべきです。ただし、型にはまった人たちでは無理 そうですね。 今後ともご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします。

 

Q: 「ロックダウンしてでも経済を活性化させる」とのご意見はどうですか?

 

A: 皆さん、一様にこうおっしゃいます。ですが、共産党一党独裁の下で強力に武漢市な どの都市をロックダウンした中国でも、最近は リバウンドしているようです。その理由はまだ 解明されていません。ワクチンが普及しても、 ウィルスの変異などで完全には終息しない懸念 もあります。COVID-19 との戦いは長期戦が予想されます。その間、人類は「経済と安 全の両立」で凌ぐしかないのかも知れません。 リスクマネージメントでは、悲しいことですが 最悪の事態も念頭に置かねばならないと思っています。

 

Q: 4通目の コメントはどういうものですか?

 

A: これは税理士として活躍されている方からのコメントです。

 

 

毎回面白く読ませていただいております。 JAL も大変そうですが、三菱 Jet はどうなるのでしょうか? 人生の最後でこんなになるなんて。

 

Q: 何か感想がありますか?

 

A: この方は、コロナ禍で航空需要が激減して困難な状況にある現在の航空業界を心配してく ださっているのだと思います。航空業界は必ず生き残ります。ですが、それがどの企 業で、どのような形態で生き残るかはわかりません。いずれにしても、従来のボトムアッ プ思考からトップダウン思考への意識変革が必要になると思います。「人生の最後でこん なになるなんて」というのは、ある世代以上の人たちにとって共通の嘆きだと思いま す。個人的には、「経済と安全の両立」を実現することにより、人との直接の交流を もって楽しく充実した余生を過ごしたいと願っています。

 

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2021/01/25

 

外村孝史氏から:

 

HuFac Solutions, Inc. 

ヒューファク安全情報:インドネシア航空機が墜落

2021-01-12

 

Q: どのような事故ですか?

A: 2021年1月9日、スリウィジャヤ航空182便(ボーイング737-500)がインドネシアのジャカルタ(スカルノーハッタ)国際空港 を離陸直後に海に墜落しました。56人の乗客と6人の乗員全員が死亡したと思われます。182便は パンカルピナンを出発後に現地時間12時11分にジャカルタ国際空港に到着していました。その後、13時40分 に再離陸しました。附近で雷雨が発生していたため、空港の天候は大雨と低雲をともなう悪天候 となっていました。そのために離陸が遅れて、14時18分に滑走路25Rへの離陸滑走(Taxing)が 許可されました。滑走路35Rからの離陸は14時35分に開始されました。離陸後、上昇しながら右旋 回を開始しました。14時37分に29,000フィートまでの上昇を許可されました。「フライトレーダー24」のADS-B 追跡データによれば、同便は高度約11,000フィートに到達した後に急速に降下しています。最後の記録 は14時40分で、空港からほぼ19 km、海岸の北7 kmのジャワ海上空でした。航空管制は、同便が飛行 計画通りに方位075°に向かうのではなく北西の方向に飛んでいることに気づいていました。インド ネシア政府の救難チームが海域の捜索に当たり、ダイバーが海深23mで残骸の一部を発見しました。それ以 前にも、金属部品やケーブル、救難スライドなどの浮遊物が見つかっていました。最新の報道によれば、 当局は操縦室音声記録(CVR)と飛行記録(FDR)の電波を検知しており、位置を特定していると のことです。CVRとFDRは互いに離れた場所に沈んでいるようです。

 

図.1 ありし日の事故機

 

Q: CVRとFDRがまだ解析されていないので原因を推定するのは難しいと思いますが、トップダウン思考で は何が原因だと考えられますか?

A: マスコミ報道の中にいくつかのヒントがあります。それらと他の情報を総合すれば、ある程度の原因を推 定することは不可能ではありません。弊社は、コロナ禍で恐れていた「起こるべき事故」が現実にな ったのではないかと推定しています。

 

Q: 「いくつかのヒント」とはどういうものですか?

A: 2つあります。① 同便が飛行計画通りに方位075°に向かうのではなく、北西の方向に飛んでい たという情報と、② CVRとFDRは互いに離れた場所に沈んでいるという情報です。

 

Q: ①はどういうことですか?

A: 図.2が事故機の航跡です。通常、航空機は標準計器出発方式(SID: Standard Instrument Departure) に従って空港を離陸します。ジャカルタ国際空港におけるSIDでは、離陸直後に航空管制によりレーダー 誘導されて方位075°に向かうことを指示されるようです。図.2を見れば、182便はなかなか方位 075°(ほぼ北東)に変針できず、しばらく北西方向に向かって飛んでいます。その原因としては、 パイロットによるオートパイロットの入力ミスも考えられますが、②の状況も考え合わせると方位を制御するオー トパイロット(ヘッディングモード)に何らかの異常があったことが考えられます。異常があればパイロットは狼 狽しますので、後で解析されるCVRの音声で確認できると思います。

 

図.2 フライトレーダー24のADS-B追跡データ

 

Q: ②はどういうことですか?

A: CVRとFDRは図.3のように胴体後部の同じ位置に取り付けられています。事故で墜落しても、胴体 後部によほどの損傷がない限り、CVRとFDRが墜落中に分離して離れた場所に落ちることはありま せん。これまでの墜落事故でも、CVRとFDRはほぼ同じ場所で発見されています。

 

図.3 CVRとFDRの取り付け位置

 

Q: ①と②および他の情報を総合すると、どのような事故原因が推定されますか?

A: まず②から、事故機の胴体後部にCVRとFDRを分離させるほどのかなりの程度の構造破壊があった ものと思われます。短時間でそのような構造破壊をもたらす要因があったとすれば、それは振動 (Vibration)以外には考えられません。振動の原因としては、方向舵(Rudder)の作動メカニズムの異常が考えられます。方向舵に異常があったとすれば、機体の方向維持が難しくなるのは当然で あり、①の現象も説明できます。

 

Q: 方向舵の作動メカニズムの異常で方向舵、ひいては胴体後部に激しい振動をもたらしたという経験は あるのですか?

A: あります。以前のボーイング737シリーズでは、方向舵の油圧作動筒(PCU: Power Control Unit)の手 動系統(Manual Control)と自動系統(Autopilot)が互いに干渉し合って、PCUが激しく振動す るという事故が相次いだことがあります。そのために墜落事故も何件か起きています。

 

図.4 方向舵のPCU

 

Q: そんな怖いことが起きていたとは知りませんでしたが、対策はとられたのですか?

A: もちろん、とられています。FAAは全世界のボーイング737シリーズを対象に耐空性改善命令(AD: Airworthiness Directive)を発効して、改良型のPCUに交換させました。

 

Q: 182便のボーイング737-500は当然、改良型のPCUを装備していたのではないですか?

A: 当然、改良型のPCUを装備しています。ですが、この事故では他の要因が方向舵のPCUに同じよう な激しい振動を起こさせた可能性も否定できません。

 

Q: 「他の要因」とは何が考えられますか?

A: その要因というのが、弊社がかねがね恐れていたことです。コロナ禍における航空需要の低迷により、 各航空会社は便数を減らしています。その結果、航空機の稼働率も減って航空機を休眠状態にせ ざるを得なくなっています。航空機を休眠状態にするには、一定のノウハウを必要とします。航空機 の精密機器や電子機器は、休眠状態にしていれば品質が低下するのは明らかです。ノウハウをもって いる航空会社は航空機の休眠を計画的に管理するとか、適切な保全処置(Preservation)を施す のですが、ノウハウをもたない航空会社やその余裕がない航空会社も存在します。スリウィジャヤ航空がそ うとは断言できませんが、その可能性も視野に入れておく必要があります。それに、悪天候が不 具合を助長した可能性もあります。

 

Q: コロナ禍で休眠状態に置かれていた航空機が問題を起こした事例が報告されているのですか?

A: 報告されています。コロナ禍で休眠状態に置かれていたボーイング737のエンジンのブリードバルブが腐食で開 きっぱなしになって、エンジンが飛行中に停止したという事例が4件ほど報告されています。FAAは場合によっては全エンジン停止につながると危惧して、耐空性改善命令(AD)を発効して一斉点検を 命じました。

 

Q: 182便の事故もエンジンのブリードバルブの腐食が原因とは考えられないのですか?

A: その可能性も考えましたが、総合的に考えれば可能性は少ないと思います。

 

Q: 休眠状態に置かれていた航空機の安全性といえば、事故で運航停止になっていたボーイング737MAXが 昨年暮れに解除されましたが、安全性はどうなのですか?

A: わが国ではあまり関心をもたれていませんが、欧米の航空機利用者は安全性を懸念しています。 中には、737MAXには絶対に乗らないという乗客や、航空会社に機種を時刻表に明記するよう要求 する乗客もいるそうです。737MAXの今後には注目する必要がありそうです。

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