<解説:地方創生と農水産業

 地方創生の中で農林水産業の抜本改革や活性化が「主役」とならない理由

 

ー目次ー

 

1. 政治的要因:JA(農協)・水産団体等との「癒着構造」

2.経済的要因:成長産業ではなく「衰退産業」と見なされがち

3.制度的要因:農水省と地方の関係

4.メディア・国民の関心の低さ

結論:地方創生における農水産業は「重要だが動かせない岩盤」

 

 

 地方創生という国の大方針が掲げられているにもかかわらず、農林水産業の抜本改革や本格的な活性化が政策の「主役」とならない理由は、以下のような政治的・経済的・制度的要因が複雑に絡み合っているからです。

 

1. 政治的要因:JA(農協)・水産団体等との「癒着構造」

 

強固な既得権構造

  • 農協(JA)や漁協は「地域の票田」として機能し、政党との結びつきが非常に強い。
  • 結果として、改革=利権の破壊となるため、政治家が本腰を入れて改革を進めづらい。

● JAや族議員による政策の骨抜き

  • 小泉進次郎氏が農政改革に着手した際も、農水省内の抵抗や族議員との軋轢が顕著だった。
  • 例えば「減反政策廃止」「農協法改正」なども一部妥協で終わった。
2.経済的要因:成長産業ではなく「衰退産業」と見なされがち

 

● GDP比が低く、経済波及効果が限定的とされる

  • 農林水産業のGDP比率は日本全体で約 1.2% 程度に過ぎず、成長性に乏しいと見なされがち。
  • 政策決定者や経済界にとって、IT・製造・観光などの成長分野の方が投資優先度が高い。

人手不足・高齢化が深刻

  • 農業就業者の平均年齢は 67歳超(2020年代)。
  • 担い手がいない産業を優先しても持続性が乏しいという「冷めた見方」が一部にある。
3.制度的要因:農水省と地方の関係

 

農水省は調整型官庁にとどまりがち

  • 本来、農水省は農業政策を主導すべきだが、実際はJAや都道府県との「調整」中心でリーダーシップに欠ける。
  • 改革の旗振り役ではなく「現状維持の番人」として動く場面が多い。

地方自治体は国の縛りの中で自由に動けない

  • 地方創生交付金や農業支援策は、国の制度設計に強く依存している。
  • 独自の大胆な農業施策を行おうにも、資金・権限の面で限界がある。
4.メディア・国民の関心の低さ

 

農業問題は地味で票になりにくい

  • 特に都市部では農業問題は「他人ごと」。
  • 高齢化・過疎などの構造問題が複雑で報道しづらく、メディアが踏み込みにくい。
参考:活性化が成功した例(例外的)
  • 北海道の農業法人化:大規模化・企業化が進み、効率と輸出が伸びた。
  • 愛媛や高知のスマート農業導入:ICTAIで若手農家を呼び戻す試み。

  ただしこれらは例外的で、全国的な波及は見られていません。

 

結論:地方創生における農水産業は「重要だが動かせない岩盤」
  • **地方創生の要であるはずなのに、利権・構造・投資優先度の壁が高すぎて「優先課題にされにくい」**のが現状です。
  • 本当に地方を再生するには、農業の構造改革とデジタル化、そしてJAや農水省のあり方にメスを入れる必要があります。

 

関連情報:<地方創生の動向>    <解説:地方創生とは>  

 

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