<解説:日本のデジタル通貨>
📌目次
・実際は「役割の違い」
・海外の事例との比較
・新着IT情報Nextの見解
<解説:日本のデジタル通貨>
郵貯銀行の「『DCJPY』プロジェクトに参画」や三井住友銀行が「民間銀行デジタル通貨を発行します」と表明したのは、日銀が中央銀行デジタル通貨(CBDC)を出すかどうかをまだ決めていない時期です。日銀は2026年ごろを目途に中央銀行デジタル通貨(CBDC)発行の可否を判断する段階の見込みです。
この順序だけを見ると「なぜ日銀を待たなかったのか」「日銀と銀行との間に齟齬等があるのでは」と受け止める人もいるかもしれません。
しかし、実態は対立構図ではありません。
両者は競合ではなく、役割が異なります。
銀行が先に動いたのは「日銀に逆らうため」ではなく、利用者に便利な仕組みを早めに試し、サービスとして磨くためです。民間の先行があることで、日銀もCBDCの必要性や活用イメージを検討しやすくなります。
スウェーデンでは、国民の大多数がモバイル決済サービス「Swish」を日常的に利用しています。
しかし、現金利用が減る中で、中央銀行(リクスバンク)は「すべての国民が安全なお金にアクセスできる」ことを目的にCBDC(e-クローナ)の検討を進めています。
民間の便利な決済と、公共的なCBDCが補完し合う形です。発行にはまだ至っていませんが、役割分担の考え方は日本に近いと言えます。
中国のデジタル人民元(e-CNY)は、中央銀行が主導する国家型モデルです。
民間決済(AlipayやWeChat Pay)はルールに従い、デジタル人民元を仲介する立場にあります。
日本のように民間と中央銀行が対話を通じて作るボトムアップ型とは対照的に、トップダウンでシステムを設計・運用する方法です。
表面的には順序が逆に見えますが、実際には「確執」ではなく「役割の違い」です。
民間銀行と日銀は対立ではなく、公共インフラとしてのCBDCと、利便性を高める民間デジタル通貨の二層構造で補い合う関係にあります。
海外事例を見ると、日本の方法は市場の自由な競争と中央銀行の安定性を両立させる、バランスの取れた戦略であることがわかります。
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